勤怠の端数処理は違法? 1日ごとの切り捨てはNG、月の合計だけ30分で丸められる

残業を15分単位で切り捨てるのは違法なのか。厚生労働省の資料と基発第150号にそって、丸めてよい端数と、いけない端数の境目を整理し、1日ごとの切り捨てと月の合計での丸めで賃金がいくら変わるかを例で示します。

公開日 2026年9月24日

タイムカードの打刻が18:07でも、勤怠システムが「15分単位」で18:00に丸めている。残業を30分単位でしか申請できない。こうした端数の処理は、どこまで許されるのでしょうか。この記事では、厚生労働省と労働局のリーフレット、そして昭和63年の通達(基発第150号)にそって、丸めてよい端数と、いけない端数の境目を整理します。

先に断っておくと、ここで扱うのは行政(厚生労働省・労働基準監督署)の示している考え方です。特定の会社の処理が違法かどうかは、就業規則や実際の勤務の状況によって変わり、この記事では判断できません。

結論
  • 厚生労働省のリーフレットは、1日ごとに、一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことを、労働基準法違反としています。
  • 例外として認められているのは、通達が挙げた端数処理です。中心は、1か月の時間外労働・休日労働・深夜業の各々の合計時間を、30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる方法です。
  • 1日の労働時間を切り上げて、その分の賃金を払うことは、問題ありません。
  • 認められる理由は、通達によれば、「常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたもの」だからです。

大原則:働いた時間の賃金は、全額払う

労働基準法24条1項は、賃金は「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」と定めています。ここでいう労働時間は、使用者の指揮命令下に置かれている時間で、使用者の明示または黙示の指示で業務に就いた時間は、労働時間にあたります(厚生労働省のリーフレット)。

リーフレットは、労働時間にあたる例として、指示された業務に必要な準備行為(着用を義務づけられた服装への着替えなど)や、業務後の後始末(清掃など)を事業場内で行った時間、指示があれば即座に業務に就くことを求められている待機(手待時間)、参加が義務づけられた研修を挙げています。山口労働局のリーフレットは、使用者からその都度の指示がなくても、業務の担当者として、所定労働時間以外の時間帯(休憩を含む)に準備作業や顧客対応などをした時間は、労働時間にあたるとしています。端数処理の話は、この「働いた時間は全部払う」という原則が出発点です。

認められる端数処理(基発第150号)

昭和63年3月14日の基発第150号は、賃金計算の端数の取扱いを定めています。愛知労働局が掲載している抜粋から、認められている処理をまとめると、次のとおりです。

何をどう丸めるか通達の扱い
1か月の時間外労働・休日労働・深夜業の、各々の合計時間1時間未満の端数のうち、30分未満は切り捨て、30分以上は1時間に切り上げる法24条・37条違反として扱わない
1時間当たりの賃金額、割増賃金額円未満の端数は、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる法24条・37条違反として扱わない
1か月の時間外・休日・深夜の、各々の割増賃金の総額1円未満の端数は、上と同じく50銭で切り捨て・切り上げ法24条・37条違反として扱わない
1か月の賃金支払額100円未満の端数は、50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げて支払う賃金支払の便宜上の取扱いとして、法24条違反として扱わない(就業規則の定めに基づくこと)
1か月の賃金支払額1,000円未満の端数を、翌月の賃金支払日に繰り越して支払う同上(就業規則の定めに基づくこと)

注意したいのは、最初の行の対象が、時間外労働・休日労働・深夜業の「各々の」1か月の合計時間だという点です。つまり、割増賃金の対象になる時間をそれぞれ月単位でまとめてから丸めます。この抜粋には、1日ごとに丸めてよいとも、所定労働時間内の時間を丸めてよいとも書かれていません。山口労働局のリーフレットは、この通達を挙げたうえで、「日ごとに端数処理することはできません」と明記しています。

通達は、国が行政機関に向けて法令の取扱いを示す文書で、法律そのものではありません。「違反として取り扱わない」というのは、労働基準法上の違反として扱わないという行政の取扱いです。

認められない例(厚生労働省のリーフレット)

厚生労働省のリーフレットは、次の3つを、労働基準法違反になる取扱いの例に挙げています。

  • 勤怠管理システムの端数処理で切り捨てる:1日の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)、その分の残業代を払っていない。
  • 一定時間以上でしか残業申請を認めない:残業申請を30分単位で行うよう指示し、30分に満たない時間外労働は申請できず、切り捨てた分の残業代を払っていない。
  • 始業前の作業を労働時間と認めない:毎朝、打刻の前に、着替え、清掃、朝礼などを義務づけているのに、労働時間として扱っていない。

遅刻や早退の控除も同じ考え方です。基発第150号は、5分の遅刻を30分の遅刻として賃金をカットするような処理は、実際に労務の提供がなかった時間を超えるカットになり、賃金の全額払の原則に反して違法だとしています。ただし、これを就業規則に定めた減給の制裁として、労働基準法91条の制限の範囲内で行う場合には、全額払の原則には反しないとされています。91条の制限は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えないこと、総額が1賃金支払期の賃金の総額の10分の1を超えないことです。

計算例:日ごとの切り捨てと、月の合計での丸め

1か月に20日勤務し、毎日の時間外労働(1日8時間を超えた時間)が、10分、20分、35分、5分、……と、日によってばらついた月を考えます。20日の分数は次のとおりで、実際に働いた合計は8時間20分500分)です。

10、20、35、5、40、25、50、12、18、33、8、45、27、14、38、22、9、31、16、42(分)

この時間外労働の賃金を、時給1,500円の人について、基本の賃金と25%の割増を合わせて時給の1.25倍として計算し、4つの処理を比べます(勤務時間計算ツールと同じ計算で求めています)。

処理数える時間実際との差賃金(差額)
分単位でそのまま数える実際に働いた時間8時間20分15,625円
1日ごとに、15分に満たない時間を切り捨てるリーフレットが労働基準法違反とする例6時間−2時間20分11,250円−4,375円
1日ごとに、15分単位で切り上げるリーフレットが「問題ありません」とする方向10時間45分+2時間25分20,156円+4,531円
1か月の合計を、30分未満切り捨て・30分以上切り上げ基発第150号が違反として扱わないとする方法8時間−20分15,000円−625円

日ごとに切り捨てると、この月は2時間20分4,375円)ぶんの、実際に働いた時間の賃金が払われません。しかも、切り捨ては日ごとに必ず不利になる方向にだけ働くので、勤務日が増えるほど差は積み上がります。1日に切り捨てられるのは最大14分でも、20日なら最大4時間40分になります。

月の合計で丸める方法は、端数が30分未満なら切り捨て、30分以上なら切り上げなので、労働者に有利にも不利にも働きます。切り捨てで減るのは最大29分、切り上げで増えるのは最大30分で、その差が出るのは、時間外・休日・深夜のそれぞれの月の合計です。この月は合計の端数が20分だったので、20分ぶんだけ少なく数えることになります。通達が「常に労働者の不利となるものではない」と説明しているのは、この違いを指していると考えられます(これは、通達の文言と上の計算からの読み取りです)。

この計算は、時間外労働の分だけを取り出した例です。実際の賃金には、基本の賃金、深夜や休日の割増、手当などが入ります。上の表の金額は、あくまで丸め方による違いを示すためのものです。

自分の勤務先の処理を確かめるときは

  • 給与明細や賃金台帳の時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数が、月の合計で、1時間未満の端数のところだけ丸められているのか、それとも日ごとに丸められているのかを見ます。
  • 打刻の時刻、PCの使用時間の記録、残業申請の時刻など、客観的な記録が何かを確認します。リーフレットによれば、使用者は、始業・終業時刻を、自ら確認するか、タイムカードなどの客観的な記録を基礎に確認して、適正に記録する必要があります。
  • 勤務先の就業規則(賃金規程)に、端数処理の方法がどう書かれているかを確認します。上の表の下2行は、就業規則の定めに基づいて行うものとされています。
  • それでも疑問が残るときは、リーフレットの案内にあるとおり、最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署が、問い合わせ先になります。

時刻から実働時間・深夜時間・時間外の時間を数え、月の合計に上の丸めを当てはめてみたいときは、勤務時間計算が使えます。ツールの「時間外・休日・深夜の月の合計時間を、30分未満は切り捨て、30分以上は切り上げて1時間単位にする」にチェックを入れると、通達が認める方法で、割増の対象時間だけを丸めた結果を確認できます。

この記事の限界

この記事は、2026年9月24日に、上に挙げた資料を読んで書きました。基発第150号は、原文ではなく、愛知労働局が掲載している抜粋(賃金計算の端数の取扱いの部分)と、山口労働局・厚生労働省のリーフレットが引用する内容で確認しています。通達の全文、裁判例、個別の会社の就業規則は確認していません。

このほか、変形労働時間制やフレックスタイム制のもとでの端数処理、管理監督者や裁量労働制の扱いは、この記事の対象ではありません。法令や通達は変わることがあります。個別の事情については、専門家や労働基準監督署などにご確認ください。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律その他の専門的助言ではありません。法令や制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わる場合もあります。契約書や重要な手続については、条文や公的機関の案内を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。