ネット通販にクーリング・オフはない? 返品できる期間と、「返品不可」の表示が有効になる条件

ネット通販などの通信販売には、訪問販売のようなクーリング・オフはありません。かわりに特定商取引法15条の3が、商品を受け取った日を含めて8日間の返品を認めています。期間の数え方、「返品不可」の特約が有効になる表示の条件、傷や欠陥のある商品が届いたときの扱いを、条文と消費者庁の資料にそって整理します。

公開日 2026年9月26日

「ネット通販で買ったものを、クーリング・オフで返したい」という相談は少なくありません。ところが、通信販売には、訪問販売のようなクーリング・オフの制度はありません。そのかわりに、特定商取引法15条の3が、返品についての決まりを置いています。この記事では、条文と消費者庁の資料にそって、返品できる期間の数え方、「返品不可」という表示が有効になる条件、そして「返品不可」と書かれていても返品できることがあるのかを整理します。

ここで扱うのは、法令と行政の資料が示している内容です。個別の取引で返品できるかどうかは、広告の内容や契約の状況によって変わり、この記事では判断できません。困ったときは、お近くの消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談してください。

結論
  • 通信販売にクーリング・オフはありません。かわりに、広告に返品についての特約が表示されていなければ、商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでは、申込みの撤回や契約の解除(返品)ができます(特定商取引法15条の3第1項)。
  • 数え方は、商品を受け取った日を含めて8日です(国民生活センター)。注文した日ではなく、商品が届いた日が1日目です。
  • 返品にかかる費用は、購入者の負担です(同条2項)。クーリング・オフで引取りの費用が事業者の負担になること(9条4項)とは違います。
  • 「返品不可」などの特約が優先されるのは、その特約が広告に表示されていた場合だけです。インターネット通販では、それに加えて、申込みの操作をする画面にも表示されている必要があります(施行規則44条)。
  • 「返品不可」とあっても、届いた商品が契約の内容に適合していない場合の売主の責任は、別のルールです(消費者庁のガイドライン)。

通信販売にクーリング・オフはない。かわりに返品のルールがある

特定商取引法のクーリング・オフは、訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入(8日間)と、連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引(20日間)に認められる制度です。通信販売は入っていません。国民生活センターも消費者庁の特定商取引法ガイドも、通信販売には訪問販売や電話勧誘販売のような無条件解約(クーリング・オフ)の制度がない、と説明しています。

そのかわりに、特定商取引法15条の3第1項は、通信販売の広告をした販売業者に商品を申し込んだ人や、その契約を結んだ購入者が、商品の引渡しを受けた日から起算して8日を経過するまでの間は、申込みの撤回や契約の解除を行うことができると定めています。ただし、販売業者が申込みの撤回等についての特約を広告に表示していた場合は、この限りではありません。

期間の数え方:商品が届いた日を含めて8日

起算するのは、商品の引渡しを受けた日です。国民生活センターは、特約がない通信販売では、商品を受け取った日を含めて8日以内であれば返品できるとしています。消費者庁の事例ページも、商品の引渡し等を受けた日から8日間としています。

たとえば、2026年10月5日(月)に注文し、2026年10月7日(水)に商品が届いたとします。届いた日が1日目なので、8日目は2026年10月14日(水)です。注文した日を1日目として数えると2026年10月12日(月)になり、期限を早く考えてしまいます。日付の数え方は、クーリング・オフ期限の計算やガイド「初日算入と初日不算入の違い」と同じ考え方です。

「返品不可」の特約が有効になる条件

販売業者が返品について特約を定めていても、それが優先されるのは、その特約を広告に表示していた場合です(15条の3第1項ただし書)。インターネット通販のように電子消費者契約にあたる場合は、広告に表示するだけでは足りません。顧客が申込みとなる操作をする画面にも、見やすい箇所に明瞭に判読できるように、または顧客が容易に認識できるように表示していなければなりません(同ただし書、施行規則44条)。

販売業者には、広告に返品についての事項を表示する義務もあります。11条5号は、申込みの撤回・解除に関する事項を、特約がある場合はその内容を含めて表示するよう定めています。表示の方法は、顧客にとって見やすい箇所で明瞭に判読できるように、その他顧客が容易に認識できるようにすることです(施行規則24条3号)。請求があれば書面などで提供すると表示して、広告に載せる事項の一部を省略できる場合でも、返品の可否、可能な期間などの条件、返品の費用負担は省略できません(施行規則25条)。

どういう表示なら「容易に認識できる」と考えられるかは、消費者庁の「通信販売における返品特約の表示についてのガイドライン」に例が挙がっています。返品の可否、返品の条件、返品の送料負担の有無は、他の事項より明瞭に示すものとされ、例として、商品の価格の近くに、価格と同じ大きさの文字で、色文字や太文字にして示す方法が挙げられています。インターネットの例では、パソコンの標準設定で12ポイント以上の文字で表示する、という例もあります。全商品に共通の「ご利用ガイド」などに詳細を書く方法も認められていますが、その場合も、各商品の説明箇所に「返品不可」「到着後○日以内に限り返品可」などの要点を示し、ガイドへの案内を添えることが条件です。

逆に、返品特約を極めて小さな文字で書く、何十条もある購入規約の中に他の項目と区別せずに埋もれさせる、膨大な画面をスクロールしないとたどり着けない場所に置く、といった表示は、消費者が容易に認識できるよう表示していないおそれがあるとされています。ガイドライン自身が、これらは例示だと断っています。個別の広告が条件を満たしているかどうかは、この記事では判断できません。

「返品不可」と書かれていても、返品できることがあるか

消費者庁のガイドラインは、返品特約を、商品が契約の内容に適合している場合の返品についての特約として整理しています。届いた商品が種類または品質の点で契約の内容に適合していない場合の売主の責任は、これとは別です。その責任を負わないという特約をするなら、そのことを別に表示しなければならず(ガイドラインが挙げる施行規則8条5号)、両者の区別がつかない表示は、返品特約だけを定めたものと解されて、契約に適合しない商品の責任は民法・商法の一般原則によるとされています。

消費者庁の事例ページも、広告に返品不可と書かれていた場合について、商品に隠れた瑕疵(傷や欠陥)がない限り、原則として返品できないと説明しています。つまり、返品不可の表示があっても、傷や欠陥のある商品が届いたときは別の扱いになりえます。その先の対応は、契約の内容や状況によるため、消費生活センターに相談してください。

クーリング・オフとの違い

クーリング・オフ(訪問販売など)通信販売の返品(15条の3)
数え始める日法定の書面を受け取った日(8日または20日)商品の引渡しを受けた日(8日)
効力が生じるとき通知を発した時(9条2項など)15条の3には書かれていない
引取り・返品の費用事業者の負担(9条4項)購入者の負担(15条の3第2項)
事業者の特約消費者に不利な特約は無効(9条8項)広告に表示した返品特約が優先(15条の3第1項ただし書)

いつまでに連絡すればよいか

クーリング・オフは、通知を発した時に効力が生じます(9条2項)。一方、15条の3には、これにあたる規定がありません。民法97条1項は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずると定めています。返品の連絡についてこの点を述べた公的な資料は、この記事で読んだ範囲では見つかりませんでした。

以上は、条文を並べたこの記事の読み方であって、行政の見解ではありません。そのうえでの提案ですが、8日目までに販売業者に届くように、余裕をもって連絡し、送信した記録が残るようにしておくのが安全です。

この記事で確認できていないこと

  • 15条の3の8日の数え方は、国民生活センターの「受け取った日を含めて」という説明に従いました。条文には「引渡しを受けた日から起算して八日を経過するまで」とあり、9条のクーリング・オフと同じ書き方です。
  • 返品の連絡が発信でよいのか、到達が必要なのかは、上のとおり、確認できた公的な資料にありませんでした。
  • 定期購入など、申込み画面の表示に関する別の規定(12条の6など)や、誤認による申込みの取消しは、この記事の対象外です。詳しくは消費者庁の特定商取引法ガイドを見てください。
  • 条文は、e-Govの本文を2026年9月25日に確認したものです。ガイドラインは、資料に日付が明記されていないため、最新のものを消費者庁のサイトで確認してください。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律その他の専門的助言ではありません。法令や制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わる場合もあります。契約書や重要な手続については、条文や公的機関の案内を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。