未払い残業代はいつまで請求できる? 時効3年の数え方と、支払期日ごとの最終日

未払いの残業代などの賃金は、支払期日ごとに別々に時効が進み、当分の間は3年です。2020年4月1日より前の賃金は2年のまま。1日ずれる数え方の違い、退職金5年・有給休暇2年との違い、時効を止める民法の仕組みを、労働基準法115条と厚生労働省の資料にそって整理します。

公開日 2026年9月26日

「残業代は何年前の分まで請求できるのか」という質問には、「3年」と答えるのが一般的です。ただし、その3年は、今日から数えて3年分をまとめて数えるものではなく、給料日ごとに、その給料日から別々に数えます。また、3年になったのは2020年4月1日以後に支払期日が来た賃金からで、それより前の賃金は2年のままです。この記事では、労働基準法115条と、厚生労働省の資料にそって、賃金の時効の数え方を整理します。

ここで扱うのは、法令と行政の資料が示している内容です。個別の未払い賃金が請求できるかどうか、時効が完成しているかどうかは、この記事では判断できません。心配なときは、事業場を管轄する労働基準監督署、総合労働相談コーナー、弁護士、法テラスなどに早めに相談してください。

結論
  • 賃金(残業代を含み、退職手当を除く)の請求権の時効は、法律の本則では5年ですが、附則で「当分の間は3年」とされています(労働基準法115条・附則143条3項)。
  • 数え始めるのは賃金の支払期日で、支払期日ごとに別々に進みます(基発0401第27号)。今日請求できるのは、3年前の同じ日ごろ以後に支払期日が来た分からです。
  • 3年になったのは、2020年4月1日以後に支払期日が来た賃金です。それより前に支払期日が来た賃金は、2年のままです(改正法附則2条2項)。
  • 退職手当は5年、年次有給休暇を取る権利は2年で、賃金の3年とは別です。付加金を請求できる期間は、違反のあった時から3年です。
  • 最終日は、支払期日を1日目として数えるか、翌日から数えるかで、1日ずれます。厚生労働省の例は前者です。期限が近いときは、早いほうを基準にしてください。

賃金の時効は「給料日ごと」に進む

厚生労働省の改正労働基準法等に関するQ&Aは、賃金請求権の消滅時効の起算点は、従来と同じく賃金支払期日だと説明しています。つまり、1月分の給料に含まれる残業代は1月分の給料の支払期日から、2月分は2月分の支払期日から、それぞれ別の時計で数えます。1つの時計が止まっても(時効が完成しても)、それより新しい給料日の分は、まだ時効にかかっていません。

たとえば、2026年9月26日(土)に、毎月25日払いの会社に請求するとします。時効の完成日の計算と同じ数え方で、支払期日ごとの最終日を計算すると、次の表のようになります。

支払期日最終日(支払期日を1日目に数える)最終日(翌日から数える)2026年9月26日(土)の時点
2023年8月25日(金)2026年8月24日(月)2026年8月25日(火)時効にかかっている
2023年9月25日(月)2026年9月24日(木)2026年9月25日(金)時効にかかっている
2023年10月25日(水)2026年10月24日(土)2026年10月25日(日)請求できる
2023年11月25日(土)2026年11月24日(火)2026年11月25日(水)請求できる

この日に請求できる最も古い支払期日は、2023年9月27日(水)です(翌日から数える場合は2023年9月26日(火))。毎月25日払いなら、遡れる最初の給料日は2023年10月25日(水)です。翌日になれば、その給料日の分は次々に時効にかかっていきます。おおよそ、3年前の今日より前に支払期日が来た分は時効にかかっている、と考えられます。

2020年4月1日より前の賃金は、2年のまま

民法の時効の見直しを受けて、労働基準法の賃金の時効は、2020年4月1日に、2年から5年(当分の間は3年)に延ばされました。厚生労働省のQ&Aは、新しい期間は、2020年4月1日以後に支払期日が来る賃金の請求権に適用され、支払期日がそれより前だった賃金は、改正後に請求する場合でも、改正前の期間(2年)が適用されると説明しています。

厚生労働省のリーフレットには、2020年4月1日に発生した賃金請求権の例があります。改正前の2年なら2022年3月31日、新しい期間なら2023年3月31日に時効が完成するという図です。この日付は、2020年4月1日の当日を1日目として数えたものにあたります。同じ数え方で計算すると、支払期日が2020年4月1日(水)の賃金は3年で2023年3月31日(金)、前日の2020年3月31日(火)の賃金は2年で2022年3月30日(水)が最終日です。支払期日が1日違うだけで、時効の完成は約1年違います。2026年の今から見ると、どちらもすでに時効にかかっています。

「1日ずれる」のは、初日を数えるかどうか

民法140条は、期間を日・週・月・年で定めたときは、初日は算入しない(翌日から数える)が、期間が午前零時から始まるときはこの限りでないと定めています。141条は、期間は末日の終了をもって満了するとしています。143条2項は、年で定めた期間は、起算日に応当する日の前日に満了するとしています。

この原則どおりに、支払期日の翌日から3年を数えると、たとえば2023年9月25日(月)の給料の最終日は2026年9月25日(金)です。一方、厚生労働省のリーフレットの例のように、支払期日の当日を1日目として数えると、2026年9月24日(木)です。どちらの数え方をとるべきかを、この記事で読んだ範囲の資料は述べていません。請求できるかどうかがちょうどその1日にかかっているときは、早いほうの日を基準にして、請求の手続きを済ませておくのが安全です。

3年になるのは「賃金」だけ

厚生労働省のQ&Aは、時効期間が延びた賃金として、金品の返還(23条。賃金の請求に限る)、賃金の支払(24条)、非常時払(25条)、休業手当(26条)、出来高払制の保障給(27条)、時間外・休日労働等に対する割増賃金(37条)、年次有給休暇中の賃金(39条9項)、未成年者の賃金(59条)を挙げています。次の請求権は、これとは別の期間です。

  • 退職手当(就業規則や労働協約で支給条件があらかじめ明確にされている退職金)は、これまでどおり5年です。
  • 年次有給休暇を取る権利は、2年のままです。労働基準法上は、前年度の年休権だけが繰り越されます。ただし、年次有給休暇を取った日の賃金の請求権は、賃金として3年です(厚生労働省のQ&A)。
  • 災害補償の請求権などは、これまでどおり2年です。2027年4月1日に施行される予定の改正で、115条の書き方が変わり、災害補償の一部(性質上、災害補償の事由に当たるかどうかを容易に判断できない疾病として政令で定めるもの)は5年になります。賃金・退職手当・年次有給休暇の期間は変わりません。

時効を止めるには:完成猶予と更新

時効の期間が過ぎそうなときに使える民法の仕組みを、条文にそって整理します。どれが実際に使えるか、有効かどうかは、個別の事情によるため、弁護士などに相談してください。

  • 催告(請求書や内容証明郵便での請求など)があると、その時から6か月を経過するまで、時効は完成しません。時効の完成が猶予されている間の再度の催告には、この効力はありません(民法150条)。
  • 裁判上の請求、支払督促、調停などがあると、その事由が終了するまで、時効は完成しません。確定判決などで権利が確定すると、そこから新たに時効が進み始めます(147条)。
  • 権利についての協議を行う旨の合意を書面(電磁的記録を含む)でしたときは、合意から1年など、定められた時までは完成しません(151条)。
  • 使用者が支払い義務を認める(承認する)と、その時から新たに時効が進み始めます(152条)。

また、時効の期間が過ぎても、時効は当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができません(145条)。

付加金と、記録の保存期間

割増賃金などを支払わなかった使用者に、裁判所が、未払金と同額の付加金の支払を命じることができる制度(114条)があります。付加金を請求できる期間は、違反のあった時から、当分の間3年です。厚生労働省のQ&Aは、「違反があった時」は、就業規則などで定められた支払期日に支払がされなかった時だと説明しています。これは賃金そのものの時効とは別に数える期間です。

賃金台帳やタイムカードなどの記録の保存期間も、当分の間3年です(109条・附則143条)。起算日は、その記録に係る賃金の支払期日が、記録の完結の日より遅いときは、その支払期日です。賃金の時効の期間中は、証拠になる記録が保存されている仕組みになっています。

この記事で確認できていないこと

  • 支払期日の当日を数えるかどうか(上の「1日ずれる」点)。厚生労働省のリーフレットの図は当日を数える形ですが、それが法的にどの数え方に当たるのかを述べた資料は、読んだ範囲では見つかりませんでした。
  • 残業代の支払期日そのもの(毎月の給料日か、別の日か)は、会社の就業規則や賃金規程などによります。
  • 時効の完成猶予・更新が実際に使えるか、消滅時効を使用者が援用したときの扱い、請求の方法や証拠の集め方。
  • 条文は、e-Govの本文を2026年9月26日に確認しました。2027年4月1日と2028年12月23日に施行される予定の労働基準法の改正で、115条の書き方が変わりますが、賃金(本則5年、附則で当分の間3年)、退職手当、その他の請求権の期間は変わりません。「当分の間」の3年がいつまで続くかは、この記事では確認できていません。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律その他の専門的助言ではありません。法令や制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わる場合もあります。契約書や重要な手続については、条文や公的機関の案内を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。