賃貸住宅の解約は何日前? 契約書の「30日前」ルールと、法律上の原則・更新拒絶の期限

賃貸住宅の解約予告は、契約書の中途解約条項(多くは「30日前までに通知」、国土交通省の標準契約書が例)が優先します。契約書に定めがない場合の民法617条・618条(3か月)、貸主から終わらせる場合の借地借家法27条(6か月)・28条(正当事由)、更新拒絶の1年前〜6か月前(26条)を、条文と日付の計算例で整理します。

公開日 2026年9月28日

「賃貸アパートを解約したいが、何日前までに言えばいいのか」「契約書に『30日前』と書いてあるが、法律上はどうなのか」は、賃貸住宅でよくある疑問です。答えは、まず自分の契約書を見るところから始まります。この記事では、契約書に中途解約の条項があるときの読み方(国土交通省の標準契約書を例に)、契約書に何も書かれていないときの民法の原則、貸主の側から契約を終わらせる場合、期間満了時に更新を拒む通知の期限を、条文と日付の計算例で整理します。

ここで扱うのは、居住用の建物の賃貸借(普通借家契約)についての法令と公的な資料の内容です。個別の契約書の条項が有効かどうか、実際にいつ解約できるかは、この記事では判断できません。契約書・重要事項説明書を確認し、迷うときは消費生活センターや弁護士などに相談してください。

結論
  • 何日前までに言えばいいかは、まず自分の契約書の「解約」「中途解約」の条項を見てください。多くの契約書は、法律の原則より優先する独自の予告期間(「30日前」「1か月前」など)を定めています。
  • 契約書に何も書かれておらず、かつ期間の定めがある契約なら、期間の途中で借主から一方的に解約することは、原則としてできません(民法618条は、解約する権利が契約で認められている場合に限って民法617条を準用します)。この場合は貸主との合意解約か、期間満了を待つことになります。
  • 契約に期間の定めがない場合(または借主の中途解約権が契約で認められている場合)は、借主はいつでも解約を申し入れることができ、契約は申入れが貸主に届いた日から3か月で終了します(民法617条1項2号)。
  • 貸主の側から終わらせるのは、はるかに厳しいルールです。期間の定めのない契約を貸主が解約するには、申入れから6か月に加えて「正当事由」が必要です(借地借家法27条・28条)。期間の定めがある契約の更新を拒むには、期間満了の1年前から6か月前までの間に通知したうえで、同じく正当事由が必要です(26条・28条)。
  • 通知は、出した日ではなく、相手に届いた日から効力が生じます(民法97条1項)。日数はすべて、この「届いた日」を基準に数えます。

まず契約書の「解約」条項を確認する

民法上、期間の定めがある賃貸借は、原則として期間の途中で一方的に解約できません。しかし618条は、契約で「借主は期間内に解約する権利を持つ」と定めていれば(中途解約権の留保)、617条の原則ルールをそのまま使えると定めています。実務上、多くの賃貸借契約書はこの中途解約権を借主に与える条項を置いており、その条項の予告期間(「30日前」「1か月前」「2か月前」など)が、民法の原則より先に適用されます。何日前までに言えばいいかを知りたいときは、まず法律ではなく自分の契約書を見るべきなのは、このためです。

公的に公開されている例として、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」(法令上の使用義務はない、任意のひな形です)11条「乙からの解約」を見てみます。1項は、借主(乙)が貸主(甲)に対して少なくとも30日前に解約の申入れを行うことで契約を解約できると定めています。2項は、その30日を待てない場合でも、解約の申入れの日から30日分の賃料を払えば、随時に解約できると定めています。

  • 1項の例:2026年9月30日(水)に退去したい場合、30日前にあたるのはちょうど2026年8月31日(月)なので、その日までに申し入れれば、ぎりぎり間に合います(標準契約書の解説コメントの例)。
  • 2項の例:2026年9月30日(水)に退去したいが、2026年9月10日(木)にしか申し入れられなかった場合、30日前の予告には間に合いません。その代わり、解説コメントは、申入れの日から数えて30日分の賃料、つまり2026年10月9日(金)までの賃料を払えば、随時に解約できるとしています。

同じ11条の中でも、数え方が違うことに注意してください。1項の「30日前」は、解約する日から数えて30日前という意味なので、2026年8月31日(月)の30日後が2026年9月30日(水)になる、という単純な日数の差です。2項の「30日分の賃料」は、解説コメントの計算例を見るかぎり、申入れの日自体を1日目として数えた30日分(2026年9月10日(木)が1日目、2026年10月9日(金)が30日目)で、共益費は申入れの日にかかわらず、実際に使用した期間の分だけを払います。どちらも、通知が貸主に届いた日を基準に数えます(民法97条1項、後述)。

これは公開されている「ひな形」の一例であり、すべての契約に共通するルールではありません。予告期間の日数、支払う金額、どちらの数え方をするかは、必ず自分の契約書の実際の条項で確認してください。

契約書に何も定めがない場合の原則(民法617条・618条)

契約書に中途解約の条項が見当たらない場合、期間の定めのある賃貸借は、原則として期間の途中で借主から一方的に解約することはできません(618条は、その権利が契約で留保されている場合に617条を準用するという規定なので、留保がなければ適用されません)。この場合、引っ越しを急ぐなら貸主との合意解約を交渉するか、期間満了を待つことになります。

契約に期間の定めがない場合は、617条1項により、借主はいつでも解約を申し入れることができ、建物の賃貸借は、申入れが届いた日から3か月を経過することで終了します(同項2号。土地の賃貸借は1年、動産・貸席の賃貸借は1日です)。日数の数え方は、民法140条の初日不算入(申入れが届いた日は数えず、翌日から数える)と143条の暦による計算にそいます。

  • 2027年1月15日(金)に申入れが届いた場合、3か月後にあたる2027年4月15日(木)の終了をもって契約が終わります。
  • 2026年11月29日(日)に届いた場合は、3か月後に応当する日が2月にはない(2027年は平年で2月は28日までしかありません)ため、143条2項ただし書により、2月の末日である2027年2月28日(日)の終了をもって終わります。

民法617条・618条は、借地借家法が建物賃貸借について特に「これに反する借主に不利な特約は無効」と定めている強行規定(30条)とは別の、一般的な民法上のルールです。30条が対象とするのは借地借家法自身が定める規定(26条以下)で、617・618条のような民法本来の規定はここに含まれません。契約でこれと異なる予告期間を定めること自体は妨げられていません。

貸主から終わらせる場合は別のルール(借地借家法27条・28条)

ここまでは借主の側から解約する場合です。貸主の側から、期間の定めのない建物賃貸借を終わらせるには、借地借家法27条が適用され、解約の申入れが届いた日から6か月を経過することで終了します。ただし28条により、貸主・借主双方が建物の使用を必要とする事情、それまでの経緯、建物の利用状況・現況、立退料などの財産上の給付の申出、といった事情を総合的に考慮して「正当の事由」があると認められなければ、この解約の申入れ自体ができません。

  • 2027年1月15日(金)に申入れが届いた場合、6か月後にあたる2027年7月15日(木)の終了をもって、正当事由が認められれば契約は終わります。

借主からの3か月に比べて期間が長いうえに正当事由まで必要になるのは、借地借家法が借主の居住の安定を図る目的を持つためです。貸主から「出て行ってほしい」と言われた場合は、この記事の借主側のルールをそのまま当てはめず、期間や正当事由の有無を、消費生活センターや弁護士などに相談することをおすすめします。

期間満了時に更新を拒む通知は「1年前から6か月前まで」(借地借家法26条・28条)

期間の定めがある建物賃貸借では、当事者の一方が、期間満了の1年前から6か月前までの間に、相手方に対して更新をしない旨(または条件を変更しなければ更新をしない旨)の通知をしなければ、従前と同一の条件で契約が更新されたものとみなされます。ただし、その場合の契約は「期間の定めがないもの」になります(26条1項)。この通知は借主からもできますが、貸主から更新を拒む場合は、28条の正当事由が同じく必要です。

期間満了日から「1年前」「6か月前」にあたる日を、暦の応当日(同じ日付)で数えると、次のようになります。

  • 期間満了日が2027年3月31日(水)の契約なら、通知できる期間は、1年前の2026年3月31日(火)から、6か月前の2026年9月30日(水)までの間です。

この通知期間を逃すと、契約は自動的に更新され、しかも更新後は期間の定めのない契約になるので、その後の解約は、借主からは617条の3か月、貸主からは27条の6か月+正当事由のルールに切り替わります。なお、期間満了の日から「1年前」「6か月前」にあたる日を暦の応当日で数える読み方は、143条が定める期間の満了(起算日から数えて先の日を求める計算)を、逆向きの「〇前」という表現に当てはめたこの記事自身の計算です。この数え方を明記した条文や公的な日付の計算例は、読んだ範囲では見つかりませんでした。

契約書に「期間の定めがなく、更新がない」と明記された定期建物賃貸借(38条)は、これとは別の制度です。原則として更新がなく、期間満了で契約が終わるかわりに、期間が1年以上なら、貸主は期間満了の1年前から6か月前までの間に、期間満了により終了する旨を通知しなければ、その終了を借主に対抗できません(38条6項。通知期間の考え方は26条と同じ形です)。中途解約も原則としてできず、床面積200平方メートル未満の居住用建物で、転勤・療養・親族の介護など、やむを得ない事情で生活の本拠として使い続けることが困難になったときに限り、解約の申入れから1か月で終了する特則があります(38条7項)。自分の契約が普通借家か定期借家かは、契約書の記載で確認してください。

通知はいつ「した」ことになるか(到達主義)

ここまでのすべての日数は、通知を出した日ではなく、相手に届いた日を基準に数えます。民法97条1項は、意思表示は、その通知が相手方に到達した時から効力を生じると定めています(到達主義)。契約書や条文が「解約の申入れの日」「通知をした日」と書いていても、それは届いた日を指すのが原則です。普通郵便だけで送ると、いつ届いたかを後から証明しにくいため、配達日が記録に残る方法(簡易書留、レターパックプラス、内容証明郵便など)や、管理会社の窓口で受領印をもらう方法で提出しておくと、期日をめぐるトラブルを避けやすくなります。

この記事で確認できていないこと

  • 実際の契約書の中途解約条項の日数・金額・数え方。国土交通省の標準契約書は公開されている一つの例であり、使用が法令で義務づけられたものではありません。自分の契約書の実際の条項で確認してください。
  • 貸主に著しく有利な予告期間(極端に長い期間など)を定める特約が、消費者契約法10条などの観点で無効とされる場合があるかどうかは、個別の事情による判断で、この記事の対象外です。
  • 借地借家法26条の「1年前から6か月前まで」を、期間満了日の応当日で数える読み方は、143条の考え方をこの記事が当てはめたものです。この数え方を示した公的な日付の計算例は見つかりませんでした。
  • 28条の「正当の事由」があるかどうかの判断、定期建物賃貸借38条7項の「やむを得ない事情」にあたるかどうかの判断は、個別の事情によるもので、この記事では扱いません。
  • 土地の賃貸借(借地)、事業用の建物賃貸借、更新料の扱いは、この記事では扱いません。民法・借地借家法の該当条文は、2026年9月28日にe-Govで確認しました。

日数だけを数えたいときは日数計算、エステ・語学教室などの中途解約は中途解約の上限の計算、旅行のキャンセル料は旅行のキャンセル料の計算も使えます。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律その他の専門的助言ではありません。法令や制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わる場合もあります。契約書や重要な手続については、条文や公的機関の案内を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。