雇用保険の基本手当は、原則として離職の日の翌日から1年の間の、失業している日にだけ支給されます。この1年の間に、妊娠・出産・育児・病気やけがなどで引き続き30日以上働けない人は、ハローワークに申請すると、働けない日数のぶん受給期間を延ばせます。この申請の期限を、働けなくなって30日たってから1か月以内と書いたページが、いまも公的機関のサイトにあります。
古い「1か月以内」と、いまの申請期間
厚生労働省・労働局・ハローワークの平成29年4月1日付の案内には、変更前(これまで)と変更後の申請期間が図で並んでいます。変更前は、引き続き30日以上働けなくなった日の翌日から1か月の間だけで、その間に申請しないと、働けなかった期間のぶんの延長はできませんでした。変更後は、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請できます。
それなのに、北海道ハローワークの「受給期間を延長することができる場合は」のページには、2026年10月11日の時点で、職業につくことができない日が30日続いた日の翌日から1か月以内に申請する、という趣旨の案内が載っています。一方、神奈川労働局・ハローワークの令和8年8月版の案内は、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば申請できるとしています。同じ制度について、公的機関のページの書き方がそろっていません。
条文は、雇用保険法施行規則31条3項です。延長の申出は、働けない状態が30日以上になるに至った日の翌日から、離職の日の翌日から数えて4年を経過する日まで(加算された期間が4年に満たないときは、その期間の最後の日まで)の間にする、と書かれています。天災などのやむを得ない理由で申出ができなかったときは、その理由がやんだ日の翌日から7日以内に申出をします(31条4項)。条文に「1か月」は出てきません。
日付で見る:離職の日の翌日から働けない場合
2026年10月31日(土)に退職し、退職の翌日の2026年11月1日(日)から、出産と育児のため働けなくなった人を例にします(人物と日付は、数え方を見せるための作り話です)。働けなくなった最初の日を1日目に数えると、30日目は2026年11月30日(月)で、申請できる最初の日は2026年12月1日(火)です(30日の数え方は、この記事の読みです)。延長しないときの受給期間の最後の日は、離職の日の翌日から1年の2027年10月31日(日)です。
働けない状態が2027年5月19日(水)まで200日間続いたとすると、その200日が受給期間に加わり、延長後の受給期間の最後の日は2028年5月18日(木)になります。神奈川労働局の案内の図でも、「職業に就くことができない期間200日」が「延長された期間200日」になっています。変更前の1か月の窓なら、2026年12月1日(火)ごろに申請しないとこの延長は受けられませんでしたが、いまは2028年5月18日(木)までの間に申請できます。
| 働けない期間(2026年11月1日(日)から) | 日数 | 延長後の受給期間の最後の日 |
|---|---|---|
| 2027年2月8日(月)まで | 100日 | 2028年2月8日(火) |
| 2027年5月19日(水)まで | 200日 | 2028年5月18日(木) |
| 2029年10月31日(水)まで | 1096日 | 2030年10月31日(木) |
| 2030年6月30日(日)まで | 1338日 | 2030年10月31日(木)(4年の上限) |
上限は、離職の日の翌日から4年を経過する日(この例では2030年10月31日(木))です。雇用保険法20条1項のかっこ書は、加算された期間が4年を超えるときは4年とする、と定めています。本来の1年に加えられるのは最長で3年なので、この例では1096日(うるう日を含む3年)を超えて働けなくても、上限は変わりません。表の最後の行は、その上限で打ち切られた例です。日数を加えて延長後の最後の日を出す数え方は、法20条1項の文言と、上の神奈川労働局の図から、この記事が組み立てたものです。
申請が遅いと、受け取れなくなる分がある
厚生労働省の案内は、申請の期間内であっても、遅い申請では、受給期間延長をしても基本手当の所定給付日数のすべてを受け取れない可能性がある、と注意しています。案内の図の例では、延長後の最後の日の3か月前に申請して、すぐに受給の手続きをすると、残っている受給期間は3か月なので、所定給付日数のすべては受け取れないかもしれない、とされています。
どこまでなら収まるかを、暦の上の数だけで見てみます。受給資格が決まってから、7日の待期(神奈川労働局の案内)のあとに所定給付日数の日数分の失業している日が続くので、最後の日の2028年5月18日(木)までに全部収まるには、待期の1日目が、所定給付日数が90日なら2028年2月12日(土)、150日なら2027年12月14日(火)までである必要があります。これは、給付制限(自己都合の離職などにある期間)、失業の認定日、失業していない日をすべて除いた最も甘い計算で、実際にはもっと早く始める必要があります。所定給付日数は人によって違います。
つまり、申請の「期限」が延長後の最後の日までだとしても、実際に基本手当を受け取りたいなら、働けるようになったらすぐにハローワークで求職の申込みと受給資格の決定を受けるほうが、受け取れる日数の面で有利です(神奈川労働局・厚生労働省の案内が「できるだけ早期の申請」をお願いしているのは、このためです)。
このツールと、この記事で確認できていないこと
- 退職日を入れると、延長の申請で使う日付(30日目、申請できる最初の日、延長後の最後の日)と、資格喪失日や任意継続・国民健康保険・国民年金の期限は、退職後の手続き期限の計算で出せます。育児休業の期間の数え方は育児休業の期間の計算です。
- 延長の理由になる事情の範囲は、条文(雇用保険法20条1項、施行規則30条)と案内を読んだだけで、ハローワークがどの事情を認めるかの判断は、この記事ではできません。申請の書類(医師の証明書や母子健康手帳など)も、案内の最新の様式を窓口で確認してください。
- 「引き続き30日以上」の数え方(働けなくなった日を1日目に数えるか)、延長の日数の数え方、30日に満たない働けない期間が複数あるときの扱いは、読んだ資料に日付の例がなく、この記事の読みです。
- 60歳以上の定年退職者などが求職の申込みを遅らせる申出(離職の日の翌日から2か月以内)、事業を始めた人の受給期間の特例、所定給付日数、給付制限は、この記事では扱いません。平成29年3月31日までの申請の扱いは、厚生労働省の案内の注記(再度の申請で延長できる可能性)を引くだけです。
- 北海道ハローワークのページが、読んだ時点(2026年10月11日)で古い案内のままなのか、別の事情があるのかは確認していません。窓口では、延長後の最後の日までの申請ができるか、直接ハローワークに確かめてください。
出典
- e-Gov法令検索 — 雇用保険法(20条1項 基本手当の支給の期間。引き続き30日以上職業に就くことができない者が申し出たときは、就けない日数を加算し、4年を超えるときは4年)
- e-Gov法令検索 — 雇用保険法施行規則(30条 延長の理由、31条3項 申出の期間、同4項 やむを得ない理由があるとき。2026年10月11日に確認し、未施行の改正の版と突き合わせた)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク — 平成29年4月1日から、雇用保険の基本手当について受給期間延長の申請期限を変更します(「これまで」と「変更後」の申請期間の図、延長の例、遅い申請の注意)
- 神奈川労働局・ハローワーク — 離職されたみなさまへ(令和8年8月版。受給期間、待期7日、受給期間延長の申請期間、「職業に就くことができない期間200日」の図)
- 北海道ハローワーク — 受給期間を延長することができる場合は(30日続いた日の翌日から1か月以内に申請する、という趣旨の案内ページ。2026年10月11日に確認)