「違反点数は1年で消える」「3年たてば前歴もなくなる」とよく言われます。どちらも間違いではありませんが、同じことを言っているのではありません。免許の停止や取消しの基準では、点数を数える3年、前歴を数える3年、1年の無違反で前の点数が入らなくなる仕組みの、3つの時計が別々に動いています。この記事では、道路交通法施行令の条文と、警視庁・滋賀県警察の案内から、3つの時計がいつ・どこから動くのかを、日付の例つきで整理します。
- 点数は、カレンダーの日付で自動的に消えるのではありません。累積点数は、新しく違反をした日を起算日にして、そのときに数え直されます(施行令33条の2第3項)。違反から3年たった点数は、そのあとの違反の計算には入りません。
- 前の違反のあと、免許を受けていた期間で1年間、違反がなければ、その違反以前の点数は、次の違反の累積点数に入りません(警視庁・滋賀県警察の案内も同じ)。
- 停止の処分を受けて、その期間に違反がなければ、処分を受ける前の違反の点数は、次の違反の累積点数に入りません。その代わり、処分を受けたことが「前歴」になり、3年間、同じ点数でも処分が重くなります。
3つの時計を並べる
点数に関する数え方は、次の3つに分かれます。どれも「起算日」は、いま計算しようとしている新しい違反をした日です。
| 時計 | 何を数えるか | 期間 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 点数の3年 | 累積点数に足す、過去の違反 | 新しい違反の日から過去3年以内 | 施行令33条の2第3項 |
| 前歴の3年 | 過去の停止・取消しの処分の回数 | 新しい違反の日から過去3年以内 | 別表第三の備考一 |
| 1年の無違反 | 前の違反や前歴を、数えるものから外すか | 免許を受けていた期間が通算1年で、その間に違反がない | 33条の2第3項1号、別表第三の備考一のただし書 |
警視庁の「点数計算の原則」は、点数を「運転者の最後の交通違反等の日を起算日として、過去3年間の累積点によって計算します」と説明しています。「最後の違反」が起算日なので、何も違反しないまま3年たっても、計算の機会がなく、点数が消えたかどうかは問われません。いつ数えるかが決まるのは、次の違反をしたときです。
点数の3年:2026年3月10日の違反は、いつの違反まで入るか
施行令33条の2第3項は、累積点数を、処分の理由となる違反行為と、「当該違反行為をした日を起算日とする過去三年以内におけるその他の違反行為」の点数の合計としています。2026年3月10日にした違反の点数が、次の違反の累積点数に入る最後の日は、3年後の同じ日付の2029年3月10日と読むのが自然です。その翌日の違反からは、3年をすぎています。この境目の日は、公的な日付の例が見つかっていないので、近いときは警察に確かめてください。
1年の無違反:前の点数が入らなくなる日
33条の2第3項1号は、免許を受けていた期間(免許の効力が停止されていた期間を除く)が通算して1年になったことがあり、その期間の初日から末日までに違反がない人の、「当該期間前の違反行為」を累積点数から除くとしています。警視庁は、運転できる期間で、前の違反と後の違反までの間が1年以上、無事故・無違反・無処分である場合に限り、点数は累積されないと書き、滋賀県警察は、違反等の後、1年以上(運転可能期間)の間、無事故無違反で過ごしたとき、と書いています。
2026年3月10日の違反のあと、次の違反をした日ごとに、前の違反の点数が入るかを並べると、次のとおりです。前の違反の翌日から1年の期間に違反がなければ外れる、と条文を読むと、2027年3月10日の違反は、まだ期間の中にあたります。「1年以上」と読む警察の案内では、その日から外れます。
| 次の違反をした日 | 条文の読み(翌日から1年) | 警察の「1年以上」の読み |
|---|---|---|
| 2027年3月9日 | 入る | 入る |
| 2027年3月10日 | 入る | 入らない |
| 2027年3月11日 | 入らない | 入らない |
1日のちがいが勝負になる場面は少ないはずですが、1年たったばかりで違反したときは、この読みの差が処分の有無を分けることがあります。いずれにしても、次の違反の累積点数に入らなくなるだけです。警視庁の優遇措置のページは、1年・2年の優遇の説明のあとに「この点数は消えるのではなく、違反歴として残っています」と書いています(2年の特例の項の末尾の文で、1年の優遇にも当てはまるかは書かれていません)。免許の停止中や失効中の日は、この1年に数えません。
処分のあと:点数は外れ、前歴が付く
33条の2第3項3号は、違反を理由に免許の効力の停止を受けたことがあり、その処分の期間内に違反がなかった人について、「当該処分を受ける前の違反行為」を累積点数から除くとしています(取消しを受けた場合の2号も同じ仕組みです)。滋賀県警察の案内では「免許取消し、停止等の処分を受け、その期間中を無事故無違反で過ごしたとき」です。処分の理由になった違反は、もう一度は足されません。
その代わり、処分を受けたこと自体が前歴になります。別表第三の備考一は、前歴を「累積点数に係る違反行為をした日を起算日とする過去三年以内」の停止・取消しの処分としていて、停止の処分を受けた2026年4月20日の場合、2029年4月20日までにする違反の判定で、前歴1回と数えられます。同じ点数でも、前歴があると処分が重くなります。
具体例です。2026年4月20日に、6点の累積で停止30日の処分を受けた人は、2026年5月19日まで停止でした。その停止の期間に違反はありませんでした。その後、2026年9月1日に3点の違反をしたとします。
- 前の6点をそのまま足して、9点と考えると、前歴なしの9点なので、停止60日になってしまいます。
- 条文の読みでは、前の6点は除かれて、3点だけです。ただし前歴が1回あるので、前歴1回の3点です。前歴1回の停止は4点からなので、この3点では、停止にも取消しにもなりません。
- 同じ人が3点でなく5点の違反をしていたら、前歴1回の5点で、停止60日です。前歴がなければ、5点では処分になりませんでした。
つまり、処分を受けた人は「点数が戻る」のではなく、「点数は戻るが、前歴で基準が低くなる」ので、少ない点数で再び処分を受けやすくなります。停止の日数、取消しの基準は、違反点数の処分の基準で、前歴と累積点数を入れて調べられます。
軽微な違反の特例:2年の無違反のあとの3点以下
33条の2第3項6号は、3点以下の軽微な違反をした人について、その日に免許を受けていた期間(過去3年以内)が通算2年に達していて、その2年の初日から違反の日までに違反がなく、さらにその違反のあと免許を受けていた期間が通算3か月に達して、その日までに違反がなければ、その軽微な違反を累積点数から除くとしています。警視庁は、2年以上無事故・無違反・無処分の人が1点、2点または3点の違反をし、その後3か月以上無事故・無違反で過ごしたときは、その点数は累積されないが、消えるのではなく違反歴として残る、と説明しています。
たとえば、2026年9月1日に3点以下の違反をした人が、その日から3か月を、免許を受けて、違反なく過ごしたとき、その3か月の満了日は、民法の数え方(初日不算入)で読むと2026年12月1日です。条文は「三月に達しており、かつ、当該三月に達した日までの間に違反行為をしたことがない」と書くだけで、日付の例がないので、この数え方は読みです。
また、7号は、3点以下の軽微な違反を繰り返して累積点数が6点になったときの「違反者講習」(道路交通法102条の2)を受けた人の、その通知の理由になった軽微な違反と、それ以前の軽微な違反を累積点数から除くとしています。滋賀県警察は、この講習を受ければ免許停止処分にはならず、点数も合算されない、と案内しています。
そのほかの除外:取消し・停止相当の点数のあと
33条の2第3項には、ほかにも、取消しに当たる点数(別表第三の一の表の第五欄・第六欄)に達したあと、それぞれ2年・1年違反がない場合(4号)と、停止に当たる点数(第七欄)に達したあと6か月違反がない場合(5号)に、その違反以前の違反行為を除くという定めがあります。どちらも、処分を受けた人は除かれます(4号は取消し等を受けた人、5号は3号の処分を受けた人)。条文の言葉では、どんな場合に当たるのかがすぐには分かりにくく、警察の案内にも例が見つからなかったので、この記事では読みを示さず、条文の存在だけを紹介します。
前歴は何回と数えるか
別表第三の備考一は、前歴を、累積点数に係る違反をした日を起算日とする過去3年以内に、次の1〜4のどれかに当たったことと定めています。(1) 違反を理由に免許の取消し、または6か月を超える運転禁止を受けたこと(指定された期間内に違反がない場合に限る)、(2) 免許の効力の停止、または6か月以内の運転禁止を受けたこと(処分の期間内に違反がない場合に限る)、(3) 累積点数が取消しに当たる第五欄・第六欄の点数に当たり、その後2年・1年違反がないこと、(4) 停止に当たる第七欄の点数に当たり、その後6か月違反がないこと(講習を受けた場合を除く)。さらにただし書で、免許を受けていた期間が通算1年になり、その間に違反も処分もないときは、その期間の初日より前の分を前歴から除くと定めています((1)と(3)に当たる場合には別の扱いがあります)。
つまり、前歴の回数は、日付のカウントだけでは決まらず、過去の処分の種類・その間の違反の有無で変わります。そのため、このサイトのツールは、前歴の回数を自分で選ぶ形にしています。警視庁は前歴を「行政処分歴」と呼び、0回から4回以上までで停止の日数を分けています。
この記事で確認していないこと
- 日付の数え方(3年の最後の日、1年の無違反の境目の日、3か月の満了日)は、公的な日付の例が見つかっていません。条文の言葉を、民法140〜143条の数え方で読んだものです。境目に近いときは、公安委員会・運転免許試験場に確かめてください。
- 免許の更新時の優良運転者の判定(無事故無違反の期間など)は、点数の累積とは別の制度で、扱いません。
- 個々の違反の点数、事故の付加点数、特定違反行為(酒酔い運転・ひき逃げなど)の扱い、初心運転者の再試験、反則金は扱いません。
- 道路交通法施行令は、2026年9月1日施行の版を2026年10月29日に確認しました。警視庁のページは2024年4月1日更新、滋賀県警察のページは2026年6月18日更新の版です。実際の処分は、公安委員会が決めます。
出典
- e-Gov法令検索 — 道路交通法施行令(33条の2第3項 累積点数から除く違反行為の7つの場合、別表第三の備考一 前歴。2026年9月1日施行の版を2026年10月29日に確認)
- e-Gov法令検索 — 道路交通法(103条 免許の取消し、停止等)
- 警視庁 — 点数計算の優遇(1年間・2年間の無事故・無違反。点数は消えるのではなく違反歴として残る。2024年4月1日更新)
- 警視庁 — 点数計算の原則(最後の違反の日を起算日として過去3年間の累積点数。2024年4月1日更新)
- 警視庁 — 行政処分基準点数 / 行政処分出頭通知書(停止は出頭した日から)
- 滋賀県警察 — 点数制度による運転免許の取消し・停止(無事故・無違反の優遇措置の3つ、違反者講習。2026年6月18日更新)