出産手当金や出産育児一時金の請求には、2年という期限があります。「産休が明けてから2年」と考えてしまいがちですが、協会けんぽの案内では、出産手当金の2年は、休んだ日の1日ずつに、その翌日から数えます。そのため、産休の最初の日の分から先に期限が来ます。この記事では、出産予定日より5日遅れて出産した例で、日ごとの最終日を表にして、出産育児一時金との違いと、数え方を整理します。
- 健康保険の給付を受ける権利は、行使できる時から2年で時効になります(健康保険法193条)。
- 協会けんぽの案内では、時効の起算日は、出産育児一時金が「出産日の翌日」、出産手当金が「出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日」です。厚生労働省も、出産育児一時金の申請期限は出産日の翌日から2年以内と案内しています。
- 出産手当金は、休んだ日ごとに期限が進むので、産前に休み始めた日の分から順に請求できなくなります。例では、産前の最初の日の分の最終日が2028年10月5日、産後の最後の日の分が2029年1月15日で、約3か月ちがいます。
- 最終日は、その日と同じ月日の2年後です(民法の期間の計算)。休日で延びるかどうかは、案内に書かれていません。
2年の起算日は、給付ごとに違う
健康保険法193条は、保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から2年を経過したときは、時効によって消滅すると定めています。「行使することができる時」がいつかは、条文だけでは分かりません。協会けんぽの「健康保険給付について」のQ&Aは、給付の種類ごとの起算日を、次のように表にしています(出産に関するものだけ抜き出します)。
- 出産育児一時金:出産日の翌日。
- 出産手当金:出産のため労務に服さなかった日ごとに、その翌日。
出産手当金は、健康保険法102条により、出産の日(予定日より遅れたときは予定日)以前42日(多胎妊娠は98日)から、出産の日後56日までの間の、労務に服さなかった期間について支給されます。この期間は、1日ずつが別々の給付のように、起算日が進みます。同じ表で、傷病手当金も「労務不能であった日ごとにその翌日」とされていて、同じ考え方です。
例:予定日より5日遅れて出産したとき
出産予定日が2026年11月15日、出産が2026年11月20日(予定日より5日遅れ)の例です。産前休業は、出産予定日の6週間前から取れます(出産当日は産前に含まれる)。休み始めを最も早くした場合は、2026年10月5日から出産の日までの47日間(予定日より遅れた5日を含む)、産後は2026年11月21日から2027年1月15日(出産日の翌日から56日間)です。休んだ日と、その日の分の請求の最終日は、次のとおりです。
| 休んだ日 | 日付 | その日の分の請求の最終日 |
|---|---|---|
| 産前に休み始めた最初の日 | 2026年10月5日 | 2028年10月5日 |
| 予定日 | 2026年11月15日 | 2028年11月15日 |
| 出産の日 | 2026年11月20日 | 2028年11月20日 |
| 産後に休んだ最後の日(産後56日目) | 2027年1月15日 | 2029年1月15日 |
| (比べる)出産育児一時金 | 出産日 2026年11月20日 の翌日から | 2028年11月20日 |
「産休が終わった日(2027年1月15日)から2年」と考えると2029年1月15日ですが、産前の最初の日の分は、2028年10月5日で終わります。約3か月早く期限が来ます。なお、実際に請求できるのは、休んだ期間のうち、会社から給与が出ていない分などの条件を満たす日で、休み始めの日は、会社の産前休業の取り方で決まります(この記事の例は、法定の期間を最も早く休み始めた場合です)。
自分の出産日で、一時金と出産手当金の最終日を一度に調べるには、出産・出生後の手続き期限の計算が使えます。休み始めの日は、産前産後休業の期間の計算で調べられます。
2年の数え方
協会けんぽの案内は、起算日を「その翌日」としています。民法140条により、期間の初日は数えないので、起算日から2年を数えて、民法143条2項により、期間は起算日に応当する日の前日に満了します。そのため、最終日は、休んだ日(出産日)と同じ月日の2年後です。たとえば2026年11月20日の出産なら、2028年11月20日です。2月28日・29日の出産など、2年後に同じ月日がないときは、月末に満了します。
最終日が土曜・日曜・祝日にあたるときに、翌日まで延びるかどうかは、協会けんぽ・厚生労働省の案内には書かれていません。窓口や郵送の受付に余裕を持って出すのが安全です。
出産育児一時金で、期限のほかに確認すること
- 出産した時点で加入している保険者に申請します。退職後6か月以内に出産した人は、以前加入していた保険者から出産育児一時金を受けることを選べます(以前の保険者に1年以上継続して加入していることが必要)(厚生労働省のQ&A)。
- 海外で出産した場合も、出産した時点で有効な加入資格があれば、加入している保険者に申請できます(同Q&A)。
- 医療機関に直接支払う制度を使って、費用が支給額を下回ったときは、差額を請求できます(同ページ)。
出産予定日の決め方(最終月経・排卵日・超音波)と、予定日が7日以上ずれたときに動く日付は、ガイド「出産予定日が7日以上ずれたら?」にあります。
この記事で確認していないこと
- 健康保険組合・共済組合・国民健康保険(出産育児一時金のみ)の規約や条例で、期限が別に定められているか。この記事は、協会けんぽと厚生労働省の案内、健康保険法193条にもとづきます。
- 付加給付(組合が上乗せする給付)の期限、出産手当金の額、休業中に給与が出たときの調整。
- 協会けんぽのQ&Aには、「起算日には例外もあります」という趣旨の注記がありますが、例外の具体的な内容は、この記事では確認できていません。迷うときは、加入先の協会けんぽ支部・健康保険組合に確認してください。
出典
- e-Gov法令検索 — 健康保険法(101条 出産育児一時金、102条 出産手当金、193条 時効)
- 協会けんぽ — 健康保険給付について(健康保険給付の申請期限。受けることができるようになった日の翌日から2年で時効。起算日: 出産手当金は出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日、出産育児一時金は出産日の翌日、傷病手当金は労務不能であった日ごとにその翌日)
- 厚生労働省 — 出産育児一時金等について(Q1 申請期限は出産日の翌日から2年以内、Q2 退職等で保険者が変わった場合、Q3 海外で出産した場合)
- e-Gov法令検索 — 民法(140条 初日不算入、143条 暦による計算)
- 厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」産前・産後の休業について(労働基準法65条。出産当日は産前休業に含まれる)