有期労働契約が更新されて、同じ会社との通算が5年を超えると、労働者は、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換するよう申し込めます。この記事では、無期転換申込権が発生したあとに、どう申し込むのか、会社は断れるのか、いつまでに申し込むのか、転換後の労働条件はどうなるのか、更新を打ち切られそうなときに何を確認するかを、労働契約法18条と、厚生労働省・都道府県労働局のQ&A(2025年12月)にそって整理します。申込権がいつ発生するかの計算は、無期転換ルールの計算でできます。
個別の事情(会社の就業規則、契約書の内容、雇止めの理由など)での有効・無効は、この記事では判断できません。迷ったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)にある無期転換ルール特別相談窓口などにご相談ください。
自動では転換しない:申込みが必要で、会社は断れない
- 通算5年を超えても、自動的に無期労働契約になるわけではありません。労働者が会社に「申込み」をしたときに、無期労働契約が成立します(Q2)。
- 申込みがあると、使用者は承諾したものとみなされます(18条1項)。会社は無期転換を断ることができません(Q4、Q21)。
- 申込みは、口頭でも法律上は有効です。ただし、後々のトラブルを防ぐため、書面で行うことをすすめています(Q4)。
- 無期労働契約が始まるのは、申込みをしたときの有期労働契約が終わる日の翌日からです(Q3)。厚生労働省の例は、平成25年(2013年)4月1日に始まった契約を更新して、平成30年(2018年)3月31日に通算5年になる人が、2018年4月1日(日)からの1年契約の期間中に申し込んだ場合、2019年4月1日(月)から無期労働契約になる、というものです(ツールに同じ日付を入れると同じ結果になります)。
いつまでに申し込むか
- 通算契約期間が5年を超える契約期間の、初日から末日までの間、いつでも申し込めます。申し込まずに更新したときは、新しい契約期間の初日から末日までの間、いつでも申し込めます(Q5)。
- 通算は、平成25年(2013年)4月1日以降に始まった有期労働契約から数えます。たとえば、2012年6月1日に始まった契約は数えず、2013年6月1日に始まった契約からカウントします(Q1)。
- 就業規則などで、「無期転換の申込みは契約満了の1か月前までに」のような申込みの期限を定めること自体は、禁止されていません。ただし、法律上は「契約期間が満了する日までの間に」申し込んだときに無期労働契約が成立するので、そのような期限があっても、満了日までに申し込んだ場合は、申込みが有効とされる可能性があると、Q&Aは述べています。労働者が期限までに「申込権を行使しない」という意思表示をしても、ルールの意味や、本来は自由に権利を行使できることを理解せずにしたものなら、無効になる可能性もあるとされています(Q10)。
会社が書面で示さなければならないこと
無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新のときは、使用者は、「無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)」と、「無期転換後の労働条件」を、労働者に書面で明示しなければなりません。初めて申込権が発生する契約が満了したあとも、更新するたびに明示が必要です(Q11、Q12。労働基準法施行規則5条5項・6項)。無期転換後の労働条件を決めるときに、他の通常の労働者との均衡を考慮した事項は、説明するよう努めることとされています。また、有期労働契約の締結時と更新時に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)がある場合は、その内容も明示する必要があります(Q19、同規則5条1項1号の2)。
転換後の労働条件、正社員になるのか
- 無期転換は、契約期間を有期から無期にするルールです。転換後の雇用区分(正社員になるかなど)は、会社の制度によります(Q12)。
- 給与などの労働条件は、労働協約、就業規則、個々の労働契約に「別段の定め」がある部分を除き、直前の有期労働契約と同じです(18条1項、Q12)。別段の定めをするときは、就業規則にその旨を定める必要があります(Q13)。
- 職務の内容などが変わらないのに、無期転換後の労働条件を従前より下げることは、無期転換を円滑に進める観点から望ましくないとされています。実際上の必要性がないのに、無期転換ルールを免れる意図で就業規則に別段の定めをするのは、18条の趣旨に照らして望ましくなく、合理性が認められない可能性もあります(Q13、Q14)。
- 無期転換後の雇用の上限は、定年を除いて、定められません。解雇は、労働契約法16条の解雇権濫用法理が適用され、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効です(Q16、16条)。定年を定める場合は、60歳を下回ることはできません(高年齢者雇用安定法8条、Q16)。
更新を打ち切られそうなとき(雇止め)
会社が契約の更新を拒むことを雇止めといいます。労働契約法19条は、次のどちらかにあたる有期労働契約について、労働者が契約期間の満了日までに更新を申し込んだ場合、または満了後すぐに(遅滞なく)新たな契約の締結を申し込んだ場合に、使用者が申込みを拒絶することが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、従前と同じ労働条件で申込みを承諾したものとみなす、と定めています(雇止め法理)。
- 過去に反復して更新されたことがあり、更新しないことが、期間の定めのない契約の労働者を解雇することと、社会通念上同視できると認められる。
- 労働者が、契約期間の満了時に契約が更新されると期待することについて、合理的な理由があると認められる。
どちらにあたるかは、雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約期間管理の状況、雇用継続を期待させる使用者の言動の有無などを総合的に考えて、個別に判断されるとQ&Aは述べています(Q22)。また、Q&Aは、次の点を挙げています。
- 無期転換ルールを免れる意図をもって、申込権が発生する前に雇止めをすることは、18条の趣旨に照らして望ましくありません(Q20)。更新上限(年限や回数)を設けることが、直ちに法律違反になるわけではありませんが、契約期間の満了前に会社が一方的に上限を設けても、雇止めが許されない場合があります(Q19)。
- 無期転換ルールを免れる目的で、更新上限を設けたうえで形式的に無契約期間(空白期間)を設定し、期間経過後の再雇用を約束して雇止めをすることについては、雇止めが客観的に合理的な理由を欠くとされる可能性もあると、Q&Aは述べています(Q22)。
- 無期転換を申し込んだのに、転換させないために雇止め・解雇をすることは望ましくなく、裁判になれば無効と判断される可能性は高いと考えられるとされています(Q21)。契約期間の途中の解雇は、やむを得ない事由がなければ認められません(労働契約法17条1項)。
派遣、定年後の再雇用、特例
- 派遣社員も、派遣会社と有期労働契約を結んでいれば対象です。通算が5年を超えたら、派遣先ではなく派遣会社に申し込みます(Q8)。登録型派遣では、単に派遣会社に登録しているだけの期間は、労働契約がないので通算に入りません(Q9)。
- 定年後に有期契約で継続雇用されている人にも、同じルールが適用されます。ただし、適切な雇用管理に関する計画について都道府県労働局長の認定を受けた事業主のもとでは、定年後引き続き雇用される期間は、申込権が発生しない特例があります(Q17)。高度な専門的知識を有する有期契約労働者や、大学等・研究開発法人等の研究者・教員等の特例もあります(ハンドブック)。
- 勤務する事業場や職務が変わっても、同じ法人(個人事業主なら同じ個人)との契約なら、通算されます(Q6)。同じ会社を自分の都合でいったん辞めて戻った場合は、無契約期間の長さによるクーリングで判断します(Q7)。
有期雇用の派遣労働者には、無期転換のほかに、派遣先の期間制限(同じ組織単位で3年、事業所単位は3年で延長あり)もあります。抵触日の数え方と、空白期間3箇月の境目は、ガイド「派遣の『3年』はいつまで?」にあります。
この記事で確認できていないこと
- 個別の事案で、雇止めが有効か、就業規則の定めが合理的かは、裁判所が個別に判断することです。この記事は、判断をしません。裁判例は読んでいません。
- Q&Aの数字や条文の番号は、厚生労働省・都道府県労働局のQ&A(2025年12月)によります。労働基準法施行規則5条、高年齢者雇用安定法8条、有期特措法は、この記事では、条文を読んでいません。労働契約法16〜19条は、2026年10月3日にe-Govで確認しました。
- 無期転換の申込みの具体的な文面、無期転換後の賃金・退職金・就業規則の個別の設計は、扱っていません。