定期借家(定期建物賃貸借)は、更新がなく、期間が満了すれば終わる契約です。ところが、期間が1年以上のとき、貸主は、満了の1年前から6か月前までの間に「終了します」と借主に通知しなければなりません。この通知を忘れた、または遅れたとき、契約はどうなるのでしょうか。この記事では、借地借家法の条文と、国土交通省の標準契約書の解説コメントから、通知期間の数え方、遅れたときに終了がいつになるか、普通借家との違いを、日付の例つきで整理します。
- 期間が1年以上の定期借家で、貸主が通知期間(満了の1年前から6か月前までの間)に終了の通知をしなかったとき、貸主は終了を借主に主張できません(借地借家法38条6項)。
- 通知期間のあとに通知しても無駄にはならず、通知の日から6か月を経過した後は、終了を主張できます(同項ただし書)。遅れた分だけ、借主が住み続けられる期間が延びます。
- 普通借家は、通知がなければ、従前と同じ条件で更新したものとみなされ、期間の定めがなくなります(26条1項)。同じ「通知期間」でも、定期借家は「終了を主張できる日が遅れる」、普通借家は「契約が更新される」という、ちがう結果になります。
通知期間は満了日ごとにこうなる(早見表)
38条6項の「期間の満了の一年前から六月前までの間」を、日付に直すと、満了日の数え方で1〜3日ずれることがあります。契約期間は満了日の終わりに満了すると見て、翌日から暦で逆算する読み(読みA)と、満了日そのものから暦で逆算する読み(読みB)の2つを出し、どちらでも期間内になる日を「確実」としました。月の途中の満了日なら2つは一致しますが、月末や2月がからむと差が出ます。通知は、相手に届いた時に効力が生じるので(民法97条1項)、表の日付は通知が届く日です。
| 満了日 | 読みA(満了の終わりから) | 読みB(満了日から) | 確実な期間 |
|---|---|---|---|
| 2027年3月31日 | 2026年4月1日〜2026年9月30日 | 2026年3月31日〜2026年9月30日 | 2026年4月1日〜2026年9月30日 |
| 2027年6月15日 | 2026年6月16日〜2026年12月15日 | 2026年6月15日〜2026年12月15日 | 2026年6月16日〜2026年12月15日 |
| 2027年8月31日 | 2026年9月1日〜2027年2月28日 | 2026年8月31日〜2027年2月28日 | 2026年9月1日〜2027年2月28日 |
| 2027年9月30日 | 2026年10月1日〜2027年3月31日 | 2026年9月30日〜2027年3月30日 | 2026年10月1日〜2027年3月30日 |
| 2027年12月31日 | 2027年1月1日〜2027年6月30日 | 2026年12月31日〜2027年6月30日 | 2027年1月1日〜2027年6月30日 |
| 2027年2月28日 | 2026年3月1日〜2026年8月31日 | 2026年2月28日〜2026年8月28日 | 2026年3月1日〜2026年8月28日 |
| 2028年2月29日 | 2027年3月1日〜2027年8月31日 | 2027年2月28日〜2027年8月29日 | 2027年3月1日〜2027年8月29日 |
条文にも国土交通省の資料にも、この日付の数え方の例は見つかっていません。上の表は、条文の言葉を民法の期間の計算(140〜143条)で読んだものです。期限ぎりぎりのときは、前に余裕をもって届くようにするのが安全です。満了日を入れて計算するには、賃貸の終了通知・更新拒絶の通知期限の計算が使えます。
通知が遅れると、終了はいつになるか
38条6項のただし書は、貸主が通知期間の経過後に通知した場合は、その通知の日から6か月を経過した後は、終了を借主に対抗できる、と定めています。国土交通省の標準契約書の2条4項は、これを「その通知の日から6月を経過した日に賃貸借は終了する」と書き、解説コメントは、通知をしなかった場合は当初と同一条件の賃貸借が続き、期間は貸主の通知後6月を経過した日に終了する、としています。
満了日が2027年3月31日の定期借家で、通知が届いた日ごとに、終了を主張できる最初の日を並べると、次のとおりです(通知の日の翌日から6か月を数え、その満了日の翌日以後としました)。
| 通知が届いた日 | 通知期間 | 6か月の満了日 | 終了を主張できる最初の日 |
|---|---|---|---|
| 2026年9月30日 | 期間内(最後の日) | — | 満了日(2027年3月31日) |
| 2026年10月1日 | 期間のあと | 2027年4月1日 | 2027年4月2日 |
| 2026年12月31日 | 期間のあと | 2027年6月30日 | 2027年7月1日 |
| 2027年3月31日 | 期間のあと | 2027年9月30日 | 2027年10月1日 |
| 2027年5月15日 | 期間のあと | 2027年11月15日 | 2027年11月16日 |
通知期間内に届いた最初の行は、満了日の2027年3月31日に終了します。通知期間の最後の日の翌日に届いた2行目は、2027年4月2日以後でないと終了を主張できません。満了日を過ぎてから通知した最後の行では、通知から6か月が過ぎる2027年11月16日まで、貸主は同じ条件で貸し続けることになります。標準契約書の解説コメントは、その間、貸主は借主に使用収益させる義務を負い、借主は賃料を払う義務を負う、と書いています。借主が契約を続ける意思がないときは、特別な手続きなしに終わらせることができる、ともあります。
普通借家は、通知がないと更新される
期間の定めがある普通の建物賃貸借でも、期間の満了の1年前から6か月前までの間が、通知期間です(26条1項)。当事者(貸主も借主も)が、この間に更新しない旨を通知しなかったときは、従前と同じ条件で契約を更新したものとみなされます。ただし、期間は定めがないものになります。そのあと貸主が契約を終わらせたいときは、解約の申入れをして、申入れの日から6か月を経過すると終わります(27条1項)。貸主からの更新拒絶・解約の申入れには、正当の事由が必要です(28条)。
| 定期借家 | 普通借家 | |
|---|---|---|
| 通知をする人 | 貸主(期間が1年以上のとき) | 当事者のどちらも(更新しない旨) |
| 通知期間 | 満了の1年前から6か月前までの間(38条6項) | 同じ(26条1項) |
| 通知しなかった・遅れたとき | 通知の日から6か月を経過した後に終了を主張できる | 従前と同じ条件で更新したものとみなされ、期間の定めがなくなる |
| 正当の事由 | 28条の対象は、26条1項の通知と解約の申入れ。38条6項の終了の通知は対象ではない | 貸主の更新拒絶には必要(28条) |
| 契約を続けたいとき | 更新はできず、新しく「再契約」をする(標準契約書2条2項) | 通知をしなければ更新される |
通知の方法で気をつけること
- 通知は、相手に届いた時に効力が生じます(民法97条1項)。相手が正当な理由なく届くのを妨げたときは、通常届くはずだった時に届いたものとされます(同条2項)。期限ぎりぎりに出すのではなく、届くまでの日数を引いて、余裕をもって出します。
- 標準契約書は、通知を書面で行うものとしています(2条3項)。解説コメントは、通知期間内に行ったことが明らかになるよう、内容証明郵便などの方法が望ましい、としています。解説コメントは、通知の雛形として「定期賃貸住宅契約終了についての通知」を参照するよう案内しています。
- 定期借家は更新できないので、そのまま住み続けたい場合は、再契約をします(標準契約書2条2項。再契約は定期借家に限らず、普通借家でもよいと解説コメントにあります)。
この記事で確認していないこと
- 通知期間の日付の数え方は、公的な日付の例がなく、このページの読みです。通知期間より早すぎる通知の効力、通知期間のあと(特に満了後)に通知したときの裁判所の判断は、確認していません。弁護士や不動産会社に確かめてください。
- 定期借家の契約が有効に成立しているか(書面による契約、事前説明の書面。38条1〜5項)、借主からの中途解約(居住用で床面積200平方メートル未満の場合、やむを得ない事情があれば解約の申入れから1か月。38条7項)、立退料と正当の事由の判断は扱いません。借主の解約は賃貸住宅の解約は何日前に伝える?にあります。
- 借地借家法は2026年5月21日施行の版を、2026年10月29日にe-Govで確認しました。契約書の特約が、いつでも優先する場合があります(借主に不利な特約は無効、38条8項)。