退去費用(原状回復)の借主負担の計算

賃貸住宅を退去するときの原状回復費用のうち、借主が負担する額の目安を計算。クロス6年・設備5〜15年・建物の耐用年数などで、入居年数が長いほど負担割合が下がる国土交通省ガイドラインの考え方で、敷金の精算まで表示します。

入居した部屋について

修繕する箇所(1行に1か所)

1行目

入居期間(年・か月)と、修繕する箇所の単価と量を入力すると、借主の負担額の目安がここに表示されます。

計算のしかた(国土交通省ガイドラインの考え方)

退去のとき、傷みや汚れの修繕費を全額借主が払うとは限りません。ガイドラインは、借主に原状回復の義務がある場合(故意・過失や善管注意義務違反などによる損耗)でも、建物や設備の経過年数を考えて、年数が多いほど借主の負担割合を減らすのが適当だとしています。経年変化や通常の使用による損耗の分は、毎月の賃料に含まれているので、退去時にもう一度負担すると二重になるからです。

負担割合は、耐用年数が過ぎたときに残存価値が1円になる直線(定額法)で決めます。つまり、借主の負担割合 = 1 − 経過年数 ÷ 耐用年数 です(耐用年数を過ぎたら1円)。入居時に新品や張替え直後だった設備は、入居年数がそのまま経過年数です。たとえばクロス(耐用年数6年)なら、次のようになります。

入居年数(入居時に張替え済み)借主の負担割合工事費24,000円のとき
0年100.0%24,000円
1年83.3%20,000円
2年66.7%16,000円
3年50.0%12,000円
4年33.3%8,000円
5年16.7%4,000円
6年1円1円

入居時に張替えがされていないときは、入居時の経過年数を入居年数に足します(入居時に経過3年のクロスなら、1年住むと経過4年)。経過年数がはっきりしないときは、入居時の価値を貸主と借主が話し合って決め、グラフを下にずらします。たとえば入居時の価値を80%とすれば、20%下がったところから始まります(参考資料)。ガイドラインは、入居時の状態でグラフの出発点をどこにするかは、契約当事者が確認のうえ、あらかじめ協議して決めるのが適当だとしています。

箇所ごとの耐用年数(別表2)

箇所経過年数の考え方
壁・天井のクロス(壁紙)6年
カーペット6年
クッションフロア6年
フローリング(全面の張替え)建物の耐用年数
フローリング(部分補修)考慮しない(借主に責任があれば全額)
畳表(表替え)考慮しない(借主に責任があれば全額)
襖紙・障子紙考慮しない(借主に責任があれば全額)
襖・障子の建具部分、柱建物の耐用年数
流し台5年
冷房用・暖房用機器(エアコン、ストーブ等)6年
電気冷蔵庫、ガス機器(ガスレンジ)6年
インターホン6年
主として金属製以外の家具(書棚、たんす、戸棚、茶ダンス)8年
便器、洗面台などの給排水・衛生設備15年
主として金属製の器具・備品15年
ユニットバス、浴槽、下駄箱(建物に固着して一体不可分なもの)建物の耐用年数
鍵の紛失(シリンダーの交換)考慮しない(借主に責任があれば全額)
クリーニング(通常の清掃をしていない場合)考慮しない(借主に責任があれば全額)

「建物の耐用年数」を使う箇所は、新築時からの経過年数(入居した時点の築年数 + 入居年数)で数えます。建物の耐用年数は、ガイドライン資料8(減価償却資産の耐用年数に関する省令・住宅用)の次の年数です。

  • 木造・合成樹脂造:22年
  • 木骨モルタル造:20年
  • 鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造:47年
  • れんが造・石造・ブロック造:38年
  • 金属造(骨格材の肉厚が4mmを超える):34年
  • 金属造(骨格材の肉厚が3mmを超え4mm以下):27年
  • 金属造(骨格材の肉厚が3mm以下):19年

国土交通省の計算例と同じ結果になります

国土交通省住宅局の参考資料(令和5年3月)には、次の計算例があります。このツールに同じ条件を入れると、同じ金額になります(上の「ケーススタディを入れる」で試せます)。

  • クロス、新築時から4年入居、工事単価1,200円/㎡。破れ・キズが2面(20㎡)なら、負担割合は残り2年分の1/3で、20㎡×1,200円×1/3=8,000円。喫煙のヤニや臭いで居室全体(天井を含め40㎡)の張替えが必要なら、総工事費48,000円のうち借主16,000円、賃貸人32,000円です。
  • フローリング、木造・築10年のアパートに4年入居、13㎡、単価15,000円/㎡。部分補修(2㎡)は経過年数を考慮せず2㎡×15,000円=30,000円。全面張替え(総額195,000円)なら、木造の耐用年数22年に対して14年経過なので、1−14/22を掛けて借主70,909円、賃貸人124,091円です(参考資料では、この割合は36.4%と書かれています。円未満は、ガイドラインに定めがないため、このツールは切り捨てます)。
  • ケーススタディ(RC造・築16年・入居4年・敷金12万円)。クロスの落書き(リビング30㎡の全面張替え36,000円のうち、落書きのある2面15㎡が借主の対象)は6,000円、洋室10㎡のフローリング全面張替えは47年のうち20年経過で、1−20/47を掛けて86,170円、日照による畳の変色の表替えと、掃除済みのクリーニングは借主0円。借主の負担は合計92,170円、賃貸人173,830円で、敷金12万円から27,830円が返還されます。

借主の負担になるのは、どんなとき?(別表3の例)

ツールが計算するのは、借主に責任があると判断した箇所の「金額」だけです。借主の負担になるかどうかは、ガイドラインの考え方では、傷みの原因で決まります。経年変化と通常の使用による損耗(通常損耗)は賃貸人の負担、借主の故意・過失、善管注意義務違反、通常の使用を超える使い方による損耗は借主の負担です(民法621条も、通常の使用による損耗と経年変化を除く損傷を原状に復する義務を定めています。2026年10月2日にe-Govで確認)。ガイドライン別表3には、次のような例が挙げられています。

賃貸人の負担とされる例

  • 家具の設置による床・カーペットのへこみ、設置跡
  • 畳の変色、フローリングの色落ち(日照や建物の構造の欠陥によるもの)
  • 壁に貼ったポスターや絵画の跡、テレビ・冷蔵庫の後ろの壁の黒ずみ(電気ヤケ)
  • 画鋲やピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度)
  • フローリングのワックスがけ、次の入居者確保のための畳の裏返し・表替え
  • 通常の清掃をしていた場合の、専門業者による全体のハウスクリーニング

借主の負担とされる例

  • 落書きなど、故意による毀損
  • タバコのヤニ・臭い(クロスが変色したり、臭いが付着している場合)
  • 飼育ペットによる柱などのキズ・臭い
  • 引越作業などで生じた引っかきキズ
  • 結露を放置して、貸主に通知もせず拭き取りもしなかったために拡大したカビ・シミ
  • 台所の油汚れやガスコンロ置き場の汚れ、風呂・トイレ・洗面台の水垢・カビ(清掃・手入れを怠った結果)
  • 鍵の紛失または破損による取替え

借主が負担する範囲は、傷んだ部分の補修ができる最低限の施工単位が基本です。クロスは、傷んだ箇所を含む一面分までは借主の負担としてもやむを得ないとされ、全体を張り替えて色柄を合わせる費用は、グレードアップにあたるため借主の負担にはなりません(喫煙等で居室全体が変色・臭いが付着した場合を除く)。そのため、このツールでは「工事の量(全体)」と「借主の負担対象の量」を分けて入力します。賃貸住宅の退去までの日数の数え方は、賃貸住宅の解約は何日前?で解説しています。請求書が届いたときに確認する順番と、話し合いで決まらないときの手続は、退去費用を請求されたら確認することにまとめました。

このツールで計算しないこと・確認できていないこと

  • 傷みが借主の責任かどうか、負担対象の範囲がどこまでか。ガイドラインは、これらを個別の事情で判断するものとしており、ツールは入力された内容をもとに計算するだけです。
  • 契約書の特約。ガイドラインは使用を強制するものではなく、原状回復の内容は、最終的には契約の内容や物件の使用状況によって個別に決まります(参考資料)。有効な特約があれば、結果は変わります。
  • 耐用年数を過ぎた設備でも、借主の故意・過失で使えなくなったときは負担が必要な場合があること(クロスへの落書きを消す費用など)。ツールは、耐用年数を過ぎたら1円としています。
  • 見積もりに含まれる廃材の処分費などの諸経費、消費税。参考資料も、実際には工事単価とは別に諸経費がかかることがあると述べています。
  • 残存価値1円となる「曲線」(定率法)。ガイドラインは直線(または曲線)としていますが、このツールは図で示された直線(定額法)だけを計算します。円未満の端数処理は、ガイドラインに定めがないため、切り捨てにしています。
  • 敷金の返還の時期や、敷金の充当をめぐる争い。民法622条の2は、賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに、賃貸人は、受け取った敷金から賃借人の債務の額を引いた残りを返還しなければならない、また、賃借人が債務を払わないときは賃貸人が敷金を充てられるが、賃借人から「敷金を家賃の未払いに充ててほしい」とは請求できない、と定めています(2026年10月2日にe-Govで確認)。このツールは、参考資料の流れどおり、差し引いた残りを表示するだけです。
  • ガイドライン(再改訂版)は平成23年8月のものです。2026年10月1日に、国土交通省のダウンロードページに掲載されている版であることを確認しました。法令の改正(民法の原状回復の明文化は令和2年4月1日施行と、参考資料は述べています)以降も、ガイドライン本体は改訂されていません。

出典

計算結果は一般的な目安であり、法律・税務その他の専門的助言ではありません。航空券や契約書、期限の管理など重要な場面では、公式の情報や専門家の説明でもご確認ください。