有給休暇は2年で消える? 繰越しと時効の数え方、買上げができる場合

年次有給休暇を取る権利は、付与日から2年で時効になり、繰り越せるのは前年度分だけです。消える日の数え方(付与日を数えるか)、2020年の賃金の時効の改正で変わらなかったこと、買上げができる場合、年5日の取得義務と繰越分の関係を、労働基準法115条と厚生労働省・労働局の資料にそって整理します。

公開日 2026年9月27日

「使いきれなかった有給休暇は、翌年に持ち越せるのか」「いつ消えるのか」は、よくある疑問です。労働基準法は、有給休暇を取る権利の時効を2年としていて、これが繰越しの根拠です。この記事では、労働基準法115条と、厚生労働省・労働局の資料にそって、有給休暇の繰越しと時効、消える日の数え方、買上げができる場合を整理します。付与される日数そのものは、有給休暇の付与日数計算で計算できます。

ここで扱うのは、法令と行政の資料が示している内容です。個別の会社の就業規則や、残りの日数がいくらかは、この記事では判断できません。困ったときは、労働基準監督署の総合労働相談コーナーなどに相談してください。

結論
  • 年次有給休暇を取る権利は、付与された日から2年で時効になります。使いきれなかった分を繰り越せるのは、この時効があるからで、労働基準法上は、前年度の年休権だけが繰り越されます(厚生労働省のQ&A、長野労働局)。
  • 賃金の時効が3年になった2020年4月の改正後も、有給休暇を取る権利は2年のままです。ただし、有給休暇を取った日の賃金の請求権は、賃金として3年です(厚生労働省のQ&A)。
  • 有給休暇の買上げは、原則としてできません。時効で消える分、退職・解雇で消える分、法定日数を超えて付与した分は、取得を抑えることにならない限り、買い上げてもよいとされています(長野労働局)。

2年の時効と、繰越しは「前年度分」だけ

労働基準法115条は、この法律による賃金の請求権と、災害補償その他の請求権について、時効を定めています。厚生労働省の改正労働基準法等に関するQ&Aは、115条の対象になる「その他の請求権」に、年次有給休暇請求権(39条)が含まれ、その時効は2年のままだと整理しています。長野労働局の労働条件ハンドブックは、年次有給休暇の請求権の時効は付与日から起算して2年で、「翌年まで繰り越すことができる」のは、消滅時効の規定が根拠だと説明しています。

厚生労働省の「確かめよう労働条件」Q&Aは、2020年4月に賃金の時効が3年になっても、年休権は、権利が発生した年度内に取得することが望ましく、賃金請求権と同じ扱いにする必要性がないとされて、2年のままだと説明しています。労働基準法上は、前年度の年休権だけが繰り越されます。

したがって、有給休暇は、その年に付与された分と、前の年に付与された分の、最大2回分を持つことになります。1回の付与が最大の20日なら、繰越分と合わせて最大40日になります(この40日は、条文から計算したこの記事の数字です)。

いつ消えるのか:付与日から2年

次の表は、4月1日に付与される会社(2026年に10日、2027年に11日、2028年に12日。日数は仮のもの)で、それぞれの付与分の時効の最終日を、時効の完成日の計算と同じ数え方で計算したものです。2つの数え方を並べています。付与日を1日目として数えると最終日は付与日の2年後の前日、翌日から数えると2年後の同じ日です。

付与日日数最終日(付与日を1日目に数える)最終日(翌日から数える)
2026年4月1日(水)10日2028年3月31日(金)2028年4月1日(土)
2027年4月1日(木)11日2029年3月31日(土)2029年4月1日(日)
2028年4月1日(土)12日2030年3月31日(日)2030年4月1日(月)

2026年4月1日(水)に付与された10日のうち、使いきれなかった分は、翌年の2027年4月1日(木)に繰り越され、その次の付与日の2028年4月1日(土)を迎えると、繰越しの対象ではなくなります。「前年度の年休権だけが繰り越される」という説明は、付与日を1日目として数える数え方(最終日が2028年3月31日(金))と合います。翌日から数える民法140条の原則どおりだと、最終日は2028年4月1日(土)で、次の付与日にあたります。この1日の違いについて、どちらが正しいかを述べた資料は、読んだ範囲では見つかりませんでした。実務では、付与日の2年後の前日までに使いきれなければ消える、と考えておくのが安全です。

取った日の賃金は3年、買上げは原則できない

有給休暇を取ったのに、その日の賃金が支払われなかったときは、その賃金の請求権が問題になります。これは、労働基準法39条9項の賃金で、賃金として時効は当分の間3年です(厚生労働省のQ&A。賃金の時効はガイド「未払い残業代はいつまで請求できる?」)。年次有給休暇の賃金は、就業規則などで定めておいた、平均賃金、通常の賃金、健康保険法の標準報酬日額(労使協定がある場合に限る)のいずれかで支払います(長野労働局)。平均賃金で払うときの計算は、平均賃金の計算でできます。

有給休暇は、休むことが目的なので、日数を買い上げて休ませないことは、法の趣旨に反するとされます。例外として、長野労働局のハンドブックは、年次有給休暇の取得を抑えることにならない限り、次の場合は買上げができると説明しています。法定の日数を超えて付与した休暇、付与後2年を経過して時効により消滅する休暇、退職・解雇により消滅する休暇です。

年5日の取得義務と、繰越分

年次有給休暇が10日以上付与される労働者には、付与日(基準日)から1年以内に、使用者が5日を指定して取得させる義務があります(労働基準法39条7項・8項)。長野労働局のハンドブックは、対象者かどうかを判断する「10日以上」に、繰り越した日数は含めないこと、一方で、繰り越した年休を与えた場合でも、5日の日数にはカウントできることを示しています。半日単位で与えた分は5日に数えられますが、時間単位のものは数えられません。期間の数え方は、ガイド「有給休暇の付与日を統一すると、年5日の期限はどう変わる?」で説明しています。

時間単位の年休(労使協定が必要)は、前年からの繰越し日数を含めて、付与日から1年で5日以内とするのが、ハンドブックの労使協定例です。

この記事で確認できていないこと

  • 繰越分と新しい付与分の、どちらを先に使うかを定めた条文や資料は、読んだ範囲では見つかりませんでした。
  • 会社が、法律の2年より長く、有給休暇を使えるとしている場合(就業規則などによる)の扱いは、個別の規定によります。長野労働局のハンドブックは、法定の年休と別に設けた特別休暇は年5日の数に入らないが、時効経過後も引き続き取得できるとして法定の日数に上乗せするものは別、と示しています。
  • 付与日を1日目に数えるか、翌日から数えるか(上の1日の違い)。厚生労働省の資料には、有給休暇の時効の最終日を日付で示した例は、読んだ範囲では見つかりませんでした。
  • 条文は、e-Govの本文を2026年9月27日に確認しました。2027年4月1日と2028年12月23日に施行される予定の労働基準法の改正で、115条の書き方が変わりますが、その他の請求権(有給休暇を含む)の2年は変わりません。

出典

この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、法律その他の専門的助言ではありません。法令や制度は改正されることがあり、個別の事情によって結論が変わる場合もあります。契約書や重要な手続については、条文や公的機関の案内を確認し、必要に応じて弁護士・司法書士などの専門家にご相談ください。