固定残業代の逆算
月給にみなし残業(固定残業代)が含まれるとき、基本給と固定残業代に分けて、1時間当たり賃金を計算します。求人票の基本給・固定残業代・固定残業時間が割増賃金の額を下回っていないか、実際の残業が固定残業時間を超えたときの追加の支払いも確かめられます。
月の総額を入力すると、基本給と固定残業代に分けます。
固定残業代のルール
- 固定残業代は、一定時間分までの時間外労働・休日労働・深夜業に対する割増賃金として、定額で支払われる賃金です。「みなし残業代」「定額残業手当」などとも呼ばれ、基本給に組み込むタイプと、基本給とは別の手当として払うタイプがあります(厚生労働省のQ&A)。
- 厚生労働省のQ&Aは、固定残業代を支払うこととする場合、通常の労働時間の賃金に当たる部分と、割増賃金に当たる部分(固定残業代)とを判別できるようにした上で、固定残業代の額が労働基準法37条等の方法で計算した割増賃金の額を下回るときは、その差額を支払う必要がある、としています。
- 割増賃金は、1時間当たりの賃金に割増率をかけて計算します。時間外労働は2割5分以上、1か月60時間を超えた分は5割以上です(37条1項)。月給の人の1時間当たりの賃金は、月給を、月における所定労働時間数(月によって違えば、1年間の1月平均所定労働時間数)で割った額です(施行規則19条1項4号)。
- 家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は、割増賃金の基礎に入れません(37条5項、施行規則21条)。
- 求人や募集では、固定残業代を賃金に含める場合、①固定残業代を除いた基本給の額、②固定残業代の計算方法(固定残業時間と金額)、③固定残業時間を超える分の割増賃金を追加で支払う旨、を明示することとされています(厚生労働省・労働局のリーフレット)。
計算の考え方と例
固定残業代 = 1時間当たり賃金 × 1.25 × 固定残業時間(60時間を超える分は1.5)です。月の総額(割増の基礎に入らない手当を除く)が「基本給 + 固定残業代」なので、基本給 = 総額 ÷ (1 + 1.25 × 固定残業時間 ÷ 月平均所定労働時間)と解けます。
- 月の総額20万円、固定残業45時間、1か月平均所定労働時間160時間なら、基本給は147,977円、固定残業代は52,023円で、1時間当たり賃金は925円(厳密には924.85円)です。
- 求人票が「基本給20万円、固定残業代3万円(45時間分)」と書いていて、月平均所定労働時間が160時間なら、1時間当たり賃金は1,250円で、45時間分の割増賃金は70,313円です。固定残業代3万円は、40,313円足りません(この書き方では、固定残業代の額が45時間分の割増賃金に届きません)。
- その基本給で、固定残業代が70,313円(45時間分)のとき、実際の時間外労働が60時間なら、割増賃金は93,750円で、追加で払う額の目安は23,437円です。
- 固定残業が80時間のように60時間を超えると、60時間までは1.25、超えた20時間は1.5で、合計105時間分(75 + 30)の時間単価になります。月の総額40万円・160時間なら、基本給241,509円、固定残業代158,491円です。
月平均所定労働時間は、年間所定労働日数 × 1日の所定労働時間 ÷ 12で出します。年間休日から出すには年間休日の計算が使えます(大阪労働局の例の269日・1日7時間30分なら168.125時間)。時間単価を最低賃金と比べるときの考え方は令和8年度の最低賃金の解説にあります(最低賃金の比較では、時間外・休日・深夜の割増賃金は除きます)。
このツールで計算しないこと・確認できていないこと
- 休日労働・深夜労働の固定残業代、時間外と深夜が重なる時間の割増(施行規則20条)。
- 手当が割増賃金の基礎に入るかどうかの判断(名前でなく実態で決まります)。割増の基礎に入らない手当は、「割増の基礎に入らない手当」の欄に入れた額だけを除いています。
- 固定残業代の定めが、雇用契約や賃金規程で判別できる形で有効に決められているか、手当が固定残業代として扱われるかの判断。厚生労働省のQ&Aは、手当の扱いは、契約書の記載のほか、会社の説明の内容や実際の労働時間などの事情を考慮して判断されるとしています。
- 固定残業時間が長いこと自体の適否(時間外労働の上限は、時間外労働の上限チェックで確かめられます)、最低賃金との比較、最高裁などの判決の内容(厚生労働省のQ&Aとリーフレットが挙げているものを、このサイトでは読んでいません)。
- 1時間当たり賃金と基本給の円未満の四捨五入は、このツールの計算上の扱いです。実際の給与計算で端数をどう処理するかは、会社の賃金規程によります。
- 条文は2026年10月6日にe-Gov法令検索で確認しました(労働基準法37条と施行規則19〜21条は、現行と未施行の版で同じ)。制度は改正が続くので、手続きの前に、厚生労働省の最新の資料と勤め先の賃金規程で確かめてください。
求人票で明示すべき内容や、月の総額から逆算した基本給の表、最低賃金との関係は月給にみなし残業が含まれていたら、基本給はいくら?で解説しています。月の残業代の計算は勤務時間計算、年間休日と1日の所定労働時間は年間休日の計算で確かめられます。
出典
- e-Gov法令検索 — 労働基準法(37条 時間外・休日・深夜の割増賃金。2026年10月6日に確認。現行は2026年7月17日施行で、未施行の2027年4月1日・2028年12月23日の版でも37条は同じ)
- e-Gov法令検索 — 労働基準法施行規則(19条 割増賃金の基礎となる1時間当たりの賃金の計算(月給は月平均所定労働時間で割る)、20条 深夜と時間外・休日が重なるとき、21条 割増賃金の基礎に算入しない賃金。2026年10月6日に確認。現行と2027年4月1日の版で同じ)
- 厚生労働省「スタートアップ労働条件」Q&A「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」(固定残業代の定義、判別できること、差額の支払い、求人での明示、労働条件の明示)
- 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」リーフレット(求人票に明示する3つの内容と記載例。青少年雇用促進法に基づく指針の抜粋)
計算結果は一般的な目安であり、法律・税務その他の専門的助言ではありません。航空券や契約書、期限の管理など重要な場面では、公式の情報や専門家の説明でもご確認ください。